(1)スイーツと昔の女性

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 数日後。わたしは朝から『Cafe Path』の手伝いに来ていた。わたしがシフトに入る日は、愛莉はお休みだ。  ランチタイムが終わり、全ての客が出て行ったので、わたしは颯手に勧められて、『Cafe Path』の2階の休憩室に、まかないを持って上がった。今日のメニューはオムライスで、卵の上に、クマの絵がケチャップで描かれている。可愛らしさに、思わず口元が綻んだ。 (颯手、器用)  クマを崩すのは勿体ない気もしたが、いつまでも眺めているわけにもいかないので、思い切ってスプーンを入れ、口に運んだ。ケチャップライスというものは、どうして懐かしさを感じるのだろう。わたしは夢中になってオムライスを食べると、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。  休憩時間が終わり、食器を持って階下へと降りると、いつの間にか、また客が入っていて、颯手が接客をしていた。女性の1人客に、メニューを聞いているところのようだ。わたしは急いでキッチンへ食器を持って行くと、エプロンを締め直してホールに出た。
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