(1)スイーツと昔の女性

10/16
前へ
/91ページ
次へ
 カウンターのそばで待機していると、颯手が近づいてきて、 「杏奈、ケーキセットの注文が入ったから、カトラリーをお客様へお出ししておいてくれる?」 と言った。 「分かったわ」     わたしは、フォークとナイフを籠に入れて準備をすると、トレイに載せて、女性客の方へと近づいて行った。「失礼します」と言ってテーブルにカトラリーの入った籠を置くと、 「…………」 やけに視線を感じ、わたしは顔を上げた。パチッと、女性客と目と目が合う。彼女はなぜか、わたしの顔をまじまじと見つめていた。 「……?」  何か顔についているのだろうかと思ったが、一礼してテーブルから離れた。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

638人が本棚に入れています
本棚に追加