(1)スイーツと昔の女性

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 わたしが驚いている間に、颯手はチーズケーキのデコレーションを終え、キッチンから出てくると、ベリーのソースで華やかに彩られた皿をトレイに載せた。紅茶と一緒に、手ずからなずなさんのテーブルへと運んでいく。わたしはその背中を、カウンターの中から見送った。  なずなさんのテーブルにケーキを置いた颯手は、彼女に話しかけられたようだ。何か2人で楽しそうに会話をしている。 (何を話しているのかしら……)  「元カノ」ではない「ただの昔の後輩」だと知っているのに、やきもきとして様子をうかがっていると、颯手がこちらを向いて、わたしを手招いた。わたしは努めてすました表情を浮かべると、颯手の隣まで歩いて行った。  わたしがそばまで行くと、颯手はわたしの背中に触れ、 「この子が杏奈。僕の奥さん」 となずなさんにわたしを紹介した。なずなさんは「へえ……」とつぶやいた後、 「よろしくね。私は桐谷なずな。一宮先輩と同じレストランでアルバイトをしていたの」 と微笑んだ。 「よろしくお願いします。杏奈です」  優しい笑顔に、いい人そうだと安心する。歳は20代後半……30歳手前ぐらいだろうか。
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