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「杏奈さんって若そうね」
なずなさんがわたしを見て小首を傾げたので、「20歳です」というと、
「えっ!20歳?」
なずなさんは目を丸くし、颯手の方を見た。
「先輩。犯罪じゃないですか」
「失礼やなぁ。僕はちゃんと杏奈が大人になるまで待ったで」
なずなさんの言い様に、颯手が心外だと溜息をつく。わたしはどういう顔をしたらいいのか分からず、とりあえず颯手のそばで微笑んでいた。そんなわたしたちを見て、なずなさんは、
「……そっか、先輩、結婚したのか…………」
とぽつりとつぶやき、紅茶のカップに手を伸ばした。左手で持ち上げ、唇を付ける。その薬指に指輪は無かったので、なずなさんはきっと独身なのだろうと思った。
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