(1)スイーツと昔の女性

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 なずなさんがどこに住んでいるのか分からず、きょとんとしているわたしに、颯手が、 「なずなさんは上賀茂神社近くの一軒家に住んではるねん。おばあさんの持ち家やってんて」 と教えてくれる。 「おばあちゃんが亡くなってから空き家になっていたんだけど、京都の大学に通い始めてから住むようになったの。賀茂川沿いの古い家よ。ねずみとか蛇が出るの。虫も多いし、困っちゃう」  わたしが年下だからか、なずなさんはわたしには敬語は無しで話した。  なずなさんのおばあさんの古い家と聞いて、わたしは昔、おばあちゃんと一緒に住んでいた日本家屋を思い出した。わたしのおばあちゃんの家も古かったが、式神が守っていたからか、ねずみなどは一匹も出なかった。 「ねずみだけじゃなくて、蛇も、ねずみとりのとりもちにひっつくの。始末に困るから、それが嫌」  なずなさんは、よほど蛇が嫌いなのか、ぞっとしたように、大げさに体を震わせた。 (蛇の出る家なんて、わたしも嫌だわ)  わたしも蛇が大の苦手。なずなさんに同情していると、 「それは困るね」 と颯手が気の毒そうな顔をした。なずなさんは、 「一人の時に家の中に出たらどうしようって思います」 と、溜息をついた。 「……本当に、あの人がそばにいてくれたらいいのに」  寂しそうにぽつりとつぶやいたなずなさんを見て、わたしと颯手は顔を見合わせた。なずなさんには、一緒に住みたいと思っている恋人がいるのだろうか。
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