(1)スイーツと昔の女性

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 わたしたちの表情に気が付いたなずなさんは、ふっと微笑むと、 「ねえ、先輩。ちょっと相談に乗ってもらいたいことがあるんですけど、今度、お時間いただけませんか?」 と、颯手の顔を見上げた。 「相談?ここじゃ、あかんの?」  颯手が首を傾げると、 「だって、先輩、仕事中じゃないですか。込み入った話なので、ゆっくり聞いてもらいたくて……」 と言って、なずなさんは弱々しく笑った。     「先輩、レストラン時代、私の仕事の悩みとか、よく相談に乗ってくれましたよね」  ちらりと、なずなさんがわたしを見た。その視線はまるで、「あなたが知らない先輩のことを私は知っている」と言われているようで、胸がチクリとした。 「颯手、相談に乗ってあげたらどうかな?なずなさん、何だか困ってるみたいだし……」  わたしは、もやっとした気持ちを彼女に悟られたくなくて、颯手にそう勧めた。 「そう?」  颯手はわたしの内心に気付いてはいない様子で、 「ほんなら、桐谷さん。今度、お茶でも行こか」 と微笑んだ。  このほんの少しの譲歩が、後々、激しい後悔に繋がるとは、この時の私はまだ気がついていなかった。
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