(2)嫉妬と疑いと

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(2)嫉妬と疑いと

 先日、『Cafe Path』にやって来た桐谷なずなさんは、約束通り、後日、颯手をお茶に誘ってきた。  『Cafe Path』の定休日。なずなさんと会うために颯手が出かけて行った後、わたしは、リビングのソファーの上で膝を抱え、ぼんやりと座っていた。  「ただの昔の後輩」から、悩みごとの相談を受けに行っただけ、と分かっているのに、颯手が女の人と2人きりで会っていると思うと、胸の中がもやもやする。 (わたし、心が狭いな……) 「…………」  わたしはしばらくの間、膝の上に額をつけてじっとしていたが、いつまでもそうしていても、無駄な時間が過ぎ去っていくだけだと思い、顔を上げた。 「遥に電話をしてみようかな……」  彼女なら、気晴らしのお喋りにも付き合ってくれるかもしれないと、スマホを手に取る。 (でも、急にかけたら迷惑かな?)  もしかすると、遥も篠崎君と会っているところかもしれない。スマホを見つめて躊躇していたら、ふと、SNSアプリのアイコンが目に入った。何気なくタップし、アプリを開く。フォローしているファッションブランドの新着情報を流し見ていると、ふいに、美味しそうな抹茶パフェの写真が流れてきた。 「あ……」  投稿者はnanaさん――なずなさんだ。  さっそく、今日の颯手とのお茶の写真かと思ったが、よく見ると、数日前の写真だった。  写真には、『抹茶パフェ、すごく美味しかった!今日はいい日!……といいたいところだけど、最近、彼がつめたくて、nana、落ち込んでます』というつぶやきが添えられている。 (確かなずなさんって、会社の同僚と付き合ってる……んだっけ?)  遥が言っていたことを思い出して、わたしは小首を傾げた。この文面だと、彼氏とうまくいっていないように取れる。 (あ、もしかして相談って、彼氏とのことだったのかな)  恋人との関係についての相談だと思ったら、少しほっとした。 (男心が知りたい、とかだったのかも)  乱れていた胸中が落ち着き、わたしは気を取り直すと、彼女のつぶやきをもう少しチェックしてみようと、投稿を遡り始めた。
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