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玄関まで行き「お帰りなさい」と言って出迎えると、「ただいま」と微笑みが返ってくる。
靴を脱いで廊下に上がった颯手と一緒にリビングに戻ると、わたしは2人分の紅茶を入れてソファーに座った。
「おおきに、杏奈」
「ねえ……なずなさんのお話、なんだったの?」
わたしは、ティーカップを手に取った颯手に尋ねた。彼氏とうまくいっていないという話だろうなと予想はしていたが、颯手の口からも聞いておきたかった。すると、颯手は、
「彼氏とうまくいってへんねんて。相手の人、会社の同僚らしいけど、仕事ができる人で忙しいらしいわ。2人きりで会えへんから寂しいて言うてはったわ」
と難しい顔をした。
「ラインが既読にならないとか、家に行っても留守とかでしょう?」
そう言うと、颯手は、
「杏奈、なんで分かったん?」
と驚いた顔をした。わたしはスマホを手に取りSNSのアプリを開くと、なずなさんの投稿を颯手に見せた。
「ああ、こっちでも愚痴ってはったんやね」
颯手は苦笑した後、
「相手の人、連絡ぐらいしてあげはったらええのにね」
同情するように言って、紅茶に口をつけた。
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