とにかく痛い死神

2/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 何だったんだ?今の奴は?  駆けながら茂雄は不可思議になり、奴の所為でまた遅れてしまう~と焦燥感に駆られながら突っ走り、待ち合わせ場所まで来たが、琴美はいなかった。  腕時計を見ると、約束の時間より5分遅れていた。  あーあ、怒ってどっかへ行っちまったんだ、はあ、なんて気が短いんだ、はあと茂雄が息を上げながら嘆息しているところへ、さっきの男が息も上げずにひょっこり現れて軽い調子で言った。 「ね、不幸が始まったでしょ!」 「お、お前は一体、何者なんだ!」 「だから言ったでしょ。死神です。」  そう言われて茂雄は男を矯めつ眇めつ眺めてからぽつりと言った。 「マジで?」 「はい。」  極普通の中年男にしか見えないので茂雄はきょとんとして暫くの間、男と顔を見合わせた。が、こんな奴と関わってると、もっと不幸になると思ったので急いでその場を離れた。  奴はどうやって俺に追いついたんだろう?追いかけて来たのだろうか?否、背後からそれらしき足音は聞こえなかった。第一、奴は息を全然上げていなかった。全くアクロバティックな奴だ!まるで俺は奴に本当に憑りつかれたみたいだと茂雄は再び不可思議な気分になり死神と号する男のことを思ってブルーな気分になり今、何処にいるのだろうと琴美のことを思って更にブルーな気分になりながら街中を当てもなく彷徨っていると、背後から不意に声を掛けられた。 「ちょっとあなた!」  茂雄は思わず振り向くと、例の男であることが分かり、背筋に冷たいものが走った。 「あなた、知りたくないですか?」 「えっ、な、何を?」 「5分後のあなたを・・・」  そう言われて茂雄は死神と名乗るからには不吉なことを言うに違いないと思い、敢えて無視してすたすたと歩いて行った。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!