とにかく痛い死神

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 すると、5分後にカフェで例の男とお茶している琴美を窓越しに発見した茂雄は、これは一体全体、どういうことなんだ?!と訳が分からなくなりながら驚愕した。  兎にも角にも茂雄は男から琴美を引き離そうとカフェの中へ入ってみると、例の男だとばかり思っていた男がもっと若い男であることが分かったので俺は錯覚したんだと思い、自分に琴美が気づいても相手の男と談笑するのを止めないのを見てナンパされて俺を見捨てたんだと失望した。その内、そう言えば、さっきメールの着信音が鳴ったなあと気づき、琴美からかと思ってスマホを取り出し、メールを確認すると、「彼氏かえちゃったサヨ~ナラ~(´Д`)o尸」とあった。だから茂雄はショックの余りその場に膝から崩れ落ちた。  彼は未練があったもののどうすることも出来ず、よろよろと立ち上がると、ゴルゴタの丘で磔刑(たっけい)に処せられたキリストの如く項垂れ、肩を落とした儘、すごすごとカフェを出た。そうして喪家之狗の如く暗然とした面持ちで歩いていると、またもや背後から不意に声を掛けられた。 「彼女に振られましたね!」  茂雄は奴だと気づいたが、相手にしまいと振り向きもせず、無言で無気力に依然として失望しながら歩き続けた。  男はついて来ながら言った。 「そっちへ行くと、5分後、痛い目に遭いますよ!」  そう言われても茂雄はその時、落ち込む余りどう転んでも構わないと思う程、自棄気味に生きる気力がなくなっていたし、これ以上不幸なことは起こり得ないとするバイアスがかかっていたので只々惰性的に進んで行った。  男は猶もついて行き、5分経つと、茂雄のジーンズの後ろポケットから財布を抜き取って言った。 「今、スリに遭いましたよ。」 「ああ、そう・・・」と言うだけで確かめようともせず沈み切った体の儘、歩いて行く茂雄に追い討ちをかけるように、「そっちへ行くと、5分後、とんでもなく痛い目に遭いますよ!」と男はにやにやしながら言って立ち止まった。  すると、5分後、キモオタ風情の青年が疾風怒濤の勢いで茂雄に向かって駆けて来て茂雄にぶち当たりざまナイフを茂雄の胸に突き立てた。  言わずもがな通り魔だった。刺さりどころが悪く呆気なく息絶えた茂雄のところへやって来た男は、「だから言わんこっちゃない。」と言いながら屍から魂を抜き取った。で、にんまりして魂に言った。 「ね、痛かったでしょ。」
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