とにかく痛い死神

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 こないだ3分遅れただけで終日不機嫌になったからなあ・・・  茂雄は気の短い琴美の事を恐れながら小走りに待ち合わせ場所に向かっていると、前方に蹲っている男を認めた。  茂雄は見過ごす訳にはいかなくなって立ち止まると、膝に手を置き前かがみになって聞いてみた。 「どうしたんですか?」  すると、男は項垂れた儘、呻いた。 「痛い・・・」 「何処が痛いんですか?」 「痛い・・・」 「何処がですか?」 「痛い・・・」 「だから、あの、何処が?」 「痛い・・・」  痛いとしか言わない男に茂雄は囚われてしまい、男の顔を覗き込もうとすると、男は卒然、顔を上げて声のトーンをソプラノに引き上げて言った。 「とにかく痛い死神です!」 「えー!」と茂雄が驚きの声を上げると、男は声のトーンをバスまで引き下げて言った。 「あなたは私に憑りつかれたのです!」 「えっ!」 「あなたの不幸が始まりました!」 「えっ?あっ、そ、そう言えば」と茂雄はあたふたしながら腕時計を見ると、「あっ、やばい!」と叫ぶや、男を残して待ち合わせ場所に向かって駆け出した。
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