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そんな訳でどうにか平穏を願って過ごしていたのに、なにかとアクシデントは起こるものなのだ
なんやかんやと進級し、私達が学園の二年生になった時。
スタバークス男爵家に引き取られたばかりの庶子、アンネローゼ嬢が入学してきた
まずおかしかったのは学園長の指示だ。たしかに貴族社会に溶け込めなくて大変かもしれないが、何故そんな特に重要でもない者を同い年とはいえ弟が気にかけてやらなくてはならないのだろう?
学園にいる間は私達王族も基本的には1生徒として振る舞いはするし特別扱いは認められていないのではあるが、それはあくまで生徒としては、だ。緊急時には権限を使うこともあるし公務で公欠になることもある。
逆に学園長に、弟にそんなことを個人的に頼む権限は存在しないし、よしみで頼まれるほど個人的に親しい間柄では断じて無い
王族に対価も与えずクソどうでもいいことを頼むなど、何考えてんだこのジジイというのが私の率直な感想だ。いや、私が日々ストレスが溜まっているのはまた別の問題だが
「特に重要な者であるとの報告は受けていませんが、学園長直々にそんなことを言われるほどの何かがあるのですか?」
「あ、いや、そのな」
学園長が色ボケとか勘弁してほしいな。自分の孫みたいな歳の小娘に…これでも昔は知識人として鳴らした御仁の筈だが歳には勝てなかったようだ
弟にはそんな小娘は放っておけ、婚約者の幸せのみを考えろと強く言っておいた。
身贔屓に言えば弟は心優しい好青年ではあるのだが、どうにも世間知らずな偽善者のきらいがあってそこが少し懸念なのだ
また、弟の婚約者であるエリザベス公爵令嬢はアンタレスティーナ嬢の親友なのだ
アンネローゼ嬢がどういう人物かは知らないが、そんな小娘に構っていて万が一エリザベス嬢が傷付いたらどうするんだ
彼女はキツそうな見た目とは裏腹に中身は純真で天使のような女の子なのだ
小さい頃は癇癪持ちで酷い我儘令嬢だったのも今は笑い話。7歳でアンタレスティーナ嬢達に会ってから本当に見違えた。
そして3人はエリザベス嬢を溺愛しているのだ。お三方曰く『金髪縦ロールツンデレっ子尊い』らしい。
つまり、アンネローゼとかいう小娘の性格如何では莫大な被害が出てしまうのだ
アンタレスティーナ嬢の隣で真似をして人間の食べ物を笑顔でお試し中の彼女は、害虫を潰す時に周りのアリなど配慮しない
彼女が少し不機嫌になれば都市区画ごと無に帰してしまうかもしれないのだ
アンネローゼ嬢が"害虫"でないことを祈るしか現段階では出来ることがない
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