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 相談できる奴がいるって本当に恵まれていることなのに、大抵僕の周りの奴らはその有り難みに気づいていない。  今回の模試で、自分が勉強について相談できる人がいないことが改めてよく分かった。成績が悪かったことよりそのことの方がショックだった。自分だって他の奴らと形は違えど同じように悩んでいるというのに。  「はぁぁーーーーーーーーーーーあ……」  この短時間に二度目となる溜め息をつきながら、近くにあった水溜まりの表面を蹴った。蹴ったと言っても水面を少し揺らしただけで、手応えは全くなかったが。  僕は、夜の水溜まりが結構好きだった。  夜、真っ暗な街並みにひっそりと佇む雨の残骸は、アスファルトの凹凸を埋めて水平な静寂をつくる。少しの歪みもないそれは空の暗がりを写し出し、ぽっかりと世界に穴を空けたように見える。  この世にある全ての黒を集めて固めたようなその妖しさが、妙に僕を蠱惑した。
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