時計の針のように

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私は彼を待った。 いつもそうだった。 彼は何事にもマイペースで私との待ち合わせには必ず遅れてくる。 それも大体5分くらい遅れて… 5分後、彼は急いで私のもとへ走ってきた。 「ごめん…本当にいつも待たせちゃって…」 彼は申し訳なさそうに謝る。 「別にいいよ。でも、今度は時間守ってよ?」 彼の純粋でまっすぐな瞳を見れば、いつも許してしまう。 自分でも驚いてしまうくらいだ。 その日は確か彼と店を見て回った。 彼は別にいつもと変わった様子はなかったがその日の帰り道、彼は急に東京へ転校するということを私に伝えてきたのだ。 私は複雑な思いを抱えながら帰路へ向かった。 私と彼はこれからもずっと一緒にいると思っていた。 しかし彼が東京へ行ってしまえばもう一緒にいることはできないのだ。 そう考えるととても寂しくて苦しかった。 この頃だってどこか彼と私の時間はずれているように感じていたのに きっと彼が東京へ行ったら私たちは大きくすれ違っていく。 たった5分のずれが、少しずつ大きな時間のずれになっていくように。
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