神に仕える 髪

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1、 鏡の前    ゼウスは鏡の前に立った 「ふ~む、ふ~む」 「どうしたの? ゼウス様」と私は言った。   それにも答えず、 「ふ~む、ふ~む」と正面を見たり、右を向いたり、左を向いたりしている。 鏡に映った姿を見ては、何か不満そうだ。 「だから、どうしたの」 「もう、数千年 この髪型だから、チェンジしようと思っておるのじゃ」 「え~ 今更かよ。いや いや 今更ですか?」と声が出た。 私は、神の髪で、長い付き合いだ。「神は長~い友達」なんちゃってね。 「ギリシャじゃ、この髪型がNO.1だったのよ。もう、女神にモテて モテてのう」  ゼウスは、上目使いで、思い出し笑いをしている。 「また、そんなこと言って。ヘラ様の逆鱗にふれますよ」 「そうそう、浮気がばれて、彼女たちは、牛にされたり、熊にされたりしてかわいそうな事をした」 「そうでしょう、もう、天空にも地上にも何百人と子供がいるんでしょ」 「それはそれ、これはこれ、男はいくつになっても、これが好きなのよ」 と、小指を立てた。 「まったく、いい じいさんが」と私はぼそっとつぶやいた。 「聞こえたぞ、いいんだよ チェンジしても。おまえも、昔に比べると、張りと腰がない。色艶も落ちておる」 「何言ってんの! ゼウス様がいい加減に頭 洗ってるからじゃん。 腹立つ~。じゃ、これでどうよ」と、私は 頭から離れた。  ゼウス様は、鏡に映った自分の頭がピカピカなのに、目を丸くして 「参った、参った、戻ってくれ」と言いながら、頭を両手で隠している。 私は、少し反省させようと思い、しばらくそのままでいた。 「長~い付き合いなんだから、そんなに怒らないで欲しいのじゃ」とゼウス 「長~い付き合いだから、チェンジも有りだよ。今度はヘラクレス様の所に 行こうかな」 「そんなこと、言わんで。今度、椿油 付けてやるから」 「え、それ本当。じゃ、今回は許してやる」
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