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エピソードⅡ --箱庭猟兵の鍛錬--
白い朝靄に覆われた四角い緑の芝生の庭・・・それを取り囲む回廊のような白壁平屋の建造物・・・屋根はチタンにも似た金属で作られた暗緑色の瓦が葺かれている───
ここは空中に浮かぶ”浮遊箱庭砦”の一つ、今、その箱庭の真ん中で棒術を競い合う二人が居た。
「ハッ!・・・ハッ!・・ハアーッ!!」
「カンッ!・・・ゴンッ!・・・カーン!!」
掛け声とともに、薄紫と紺色の棒が互いに激しくぶつかり合い高い音を発する───
「セィヤーッ!!」
小さな身体の者が放った紺色の棒の三連打の攻撃が、薄紫の棒の攻撃を止めさせる──が、その刹那の直後、大きな身体の者が、薄紫の棒を旋風のように下から繰り出した。
「ハァアーッ!!」
小さな者は体を仰け反らせ、バク転とともにその一撃を躱し、次の瞬間には地面を這うような棒の水平打ちを大きな者の足首に放ち、大きな者はギリギリで棒を垂直に地面に突き立てることで、その攻撃を防いだ。
「よしっ!ここまでだ!ルイシェ」
大きな身体の青年は薄紫の棒を左脇に抱えるようにして、小さい者が体勢を整えるのを待った。
「ありがとうございます!カーイツ兄様」
小さな身体の少女が答える。
二人は揃って芝生の庭の端にあるベンチに腰を下ろした。
やがて、カーイツと呼ばれた男が話し出す。
「ルイシェ・・・お前の技の切れは、すでにこの俺に近いと見ていいだろう・・・箱庭猟兵”歩兵段”の免許皆伝だな」
「本当ですか?!ありがとうございます!・・・それじゃ、いよいよこれからの”知略兵段”の鍛錬を学べるんですね?!」
少女はいかにも嬉しいという表情をする。
しかし、カーイツの顔は曇っていた。
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