僕は火球

2/14
前へ
/14ページ
次へ
15歳になった誕生日の事。僕、星野康太(ほしのこうた)は両親からとある秘密を打ち明けられた。厳格な父親と、常に父の一歩後ろを歩いているような控えめな母親。2人の夫婦仲はとても良くお互いを思いやれる、自分でも結婚したらこんな家庭を持ちたいと思っているそんな自慢の両親。その両親がいきなり突拍子(とっぴょうし)もない事を言い出した時は、さすがに耳を疑ったものだ。 「康太。実は私達の一族は『星降りの一族』と呼ばれている。15歳になると能力が発動出来るようになる。どうしても叶えたい願いがあれば、それを一度だけ叶える事が出来る。自分が流れ星となって」 「自分の命と引き換えにだけどね。すぐには信じられないかもしれないけど本当の事よ。もちろん父さん母さんみたいに結婚して普通の生活を歩むのも自由なの。でも流れ星になるって事は一族としてとても名誉な事なの」  頭が追いつかなかった。願いを叶えようと思っても自分が死んでしまったら何にもならないじゃないか。そう訴えかけると父はこう言った。 「そうだな。私もそう思う。でも、自分よりも大切なものが見つかって、それが自分ではどうしようも出来ない災難や不幸に見舞われると知った時、私達の一族の者は能力を使ったと聞く。強い願いを込めて流れ星になった者は、それを見たたくさんの人の願いも叶えてきたらしい。私もここ最近はそんな流れ星は見ていないがな」  冗談を言っているようには聞こえなかった。真面目を絵に書いたような両親が真剣な表情で話しているのだ。ただ僕は、そんな能力が本当にあったとして、絶対に自分は使うまいと肝に命じたのを覚えている。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加