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初めて出会ったのは、高校の入学式だった。
クラスごとの写真撮影のとき、隣に並んだのがきっかけだった。
「よろしくね」
いたずらっぽそうに瞳を輝かせる朱里に、俺の心は持っていかれた。
「こちらこそ」
応える声は、緊張で少し震えていたように思う。
そこから、同じ図書委員になったり、クラスで同じ班になったりと、接点が増えていくごとに、二人の距離も縮まっていった。
そしてかなりベタだけど、文化祭の後夜祭で、俺たちは付き合う事になった。
そこからは小さな喧嘩はあったものの、特に波風のたつこともなく、日々が過ぎて行った。
大学も同じところに進むことにして、二人の学力差を前に、俺が猛烈に受験勉強をしていたある日のことだった。
朱里が、倒れて病院に運ばれた。
「もう長くない」
その一言で、俺たちの未来は色を失った。
そこからは、病院がデートの場所になった。
だぶだぶになっていく病院着。
細くなっていく手足。
目を背けたかったが、背けないと決めた。
最期を看取るのは、俺だ。
俺じゃなきゃならない。
最期のとき、朱里は終始笑顔だった。
一生分の笑顔を、俺に遺そうとしているようだった。
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