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あと、俺が出来ることはひとつだけ。
そう、笑顔で送り出すことだ。
病院では泣き崩れてしまった俺の頭を、弱弱しく朱里が撫でてくれていた。
あんな無様は晒さない。
そう思うのに、俺の目からは涙が溢れてくる。
「ずっと側にいるから」
朱里は優しく俺に囁くと、バスに乗り込んだ。
朱里の姿が、足元から影になっていく。
頭まで影に覆われる直前、朱里はとびっきりの笑顔を見せた。
この笑顔を永遠にして、俺は生きていく。
ぷしゅう、とドアが閉まり、発車するバスを見送りながら、俺は誓った。
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