星降る夜より

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会社の同僚でアルバイトの萌々子(ももこ)。 話も合うし、下手な社員より仕事もできる。 そんな彼女が最近ちょっとヘコんでるようだ。 気晴らしにドライブにでも 誘ってやろうと思っていた。 ちなみに言っておくが、 恋愛感情はまったく抱かないし、 かといってようなタイプでもない。 ドライブついでに、 標高の高い山間の駐車場にでも行って、 満天の星空でも見上げれば、 少しは心も和むだろうと思っていた。 まぁ、 本来なら彼氏とでも行けばいいのだろうが、 生憎萌々子(ももこ)は、いない歴の方が長い。 俺が言うのも失礼だが、モテとは程遠い、 愛すべきポッチャリゆるキャラタイプである。 だが、そんなごく自然な友情としてのお誘いは、 それを口にする前に消え去ることになる。 「なんか星見て『キレイ』…とか、絶対無いよね」 「だって、まず星以外見るものないし、  そういうとこって大抵寒いし、  トイレも近くにないし、  学校で行ったプラネタリウムとかも、  爆睡して怒られたなぁ(笑)」 ………… こいつのヘコんでいたのは何だったんだろう? そしてそれは自ら、 さも何事もなかったかのように打ち明けてきた。 「先輩、聞いてくださいよ~」 「この間コンビニ行ったら、  またバスクチーズケーキ売り切れてたんですよ」 「私が行くと絶ッ対ないんです」 「3日もですよー!  もう、なんで在庫増やしてくんないのよ」 コイツには、色気より食い気。 満天の星より、満タンの菓子。 今度落ち込んでる時は、 まずは食うものを差し入れしてやろうと心に決め、 星を眺めるように、 萌々子(ももこ)を遠い目で見つめたのだった。
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