それでも私は無味魂

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子供達とバタバタと朝の支度をしていると、あっという間に登校時間になった。 「母さん、今日の夕飯は?」 長男の質問に、「すき焼きの予定よ」と答えると、「マジで!?やった!」と長男が跳び跳ねた。 「私も楽しみ!ご飯が進むね!」と長女もご満悦だ。 ホラホラあんた達、早く行きなさいと子供達を玄関から押し出すと、すき焼き♪すき焼き♪行ってきますー♪と楽しそうに学校に向かって行った。 さて、私も洗い物して会社に行かなきゃ。洗濯は帰って来てからで良いか。旦那が亡き今、双子の子供達を守れるのは私だけ。 そう思いながら汚れた皿を手に取ると、夢で見た得体の知れない生き物が視界に入った。 軽く悲鳴を上げると、その生き物はケタケタ笑った。 「いつもの日常してて良いのか?お前の命は今日終わるんだぞ。死ぬ前にやりたい事を全部やっとけば?」 私はムッとした。誰があんたなんかに殺されるか!私は子供達を一人前に育て上げて、一緒に酒を飲むんだから! 「例え私が今日死ぬとしても、最期まで私はあの子達のお母さんでいたいの!あんたなんてどっか行け!ウザいのよあんた」 私がそう答えると、得体の知れない生き物は驚いた顔をして、悪魔になんて事を…と呟いた。 その後も何か色々言っている悪魔を無視して、片付けを終えると、通勤鞄を持って玄関を出た。そしてドアに鍵を掛けると、足早に職場へと向かった。 私は疲れてるだけだ。あの悪魔はだだの私の妄想だ。そうだ、そうに決まってる。
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