それでも私は無味魂

7/11
前へ
/11ページ
次へ
再び悪魔にまとわりつかれた私は、ああ今日死ぬんだと今更ながら実感した。まだ子供達は小学4年生なのに。成人した姿を見たかったのに。 「お母さん、大丈夫?私がやるからちょっと休んだら?」 縁側で洗濯物を干してた私に、長女が声をかけた。 「有難う、じゃあ一緒にやろうか」 私がそう返事をすると、テレビを観ながら宿題をしていた長男も手伝うよとやってきて、親子で洗濯物を干し始めた。 ケケッ、麗しい親子愛だぜ…と悪魔が呟く。 あーあ、そんなんで良いのかよ。最期の親子の時間だぞ。日常は今日で終わるのによー。 私は悪魔の言葉を無視して、子供達と向き合った。 「ユウ太、そのシャツちゃんとシワ伸ばしてね。そのまま乾いちゃうから」 「てゆか、それお父さんのシャツだよね。未だにたまに洗うのは何で?」 「死んじゃっても、お父さんは家族の一員だと思ってるからよ。洗濯物でくらい一緒に居たいじゃない」 フーンという子供達に、洗濯終わり!有難うねと声をかけて、居間へ戻させると、旦那のシャツの隣にこっそり自分のシャツを掛けた。私はもう、洗濯物を下ろす事はない。ならば最後は服だけでも一緒に…。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加