1 拾う神、お化け屋敷の主と出会う

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             * 「神谷心さん……っていうんだね、名前。」 ビルを出て駅に向かいながら中井さんに言われ、私は、はい、と答える。 「かわいい名前だね。何て呼べばいいかなー。」 中井さんは楽しそうにそんなことを言う。 ほぼほぼ初対面のはずなのに、フレンドリーすぎない? 私の不審げな空気を読んだのか、中井さんはごめんごめんと謝った。 「馴れ馴れしいって顔に書いてある。 ちょっと浮かれすぎてるのかもな、俺。」 中井さんは駅が見えてきたからか、すっとあの定期入れを取り出した。 「色が見えるって言ってくれたのがうれしくて、わくわくしてしまったんだ。」 中井さんは照れたように笑った。 中井さんは路線と駅名をあげる。 「神谷さんの家からあまりにも遠いと申し訳ないんだけど、どう?」 「……同じ路線で、その駅から二つ先が最寄りです。」 「へぇ……偶然だね。近くて何より。」 二人で電車に乗り込み、話を続ける。 中井さんは営業職だけあって、話をするのも聞くのもうまかった。 とても話をしやすい。 「ここちゃんの出身は随分遠いんだね。」 いつのまにか中井さんは、私のことを”ここちゃん”と呼ぶことにしたらしい。 「はい。地方の田舎町で、大学は地元を出たんですけど、やっぱり地方で比較的のどかなところで。 都会に憧れもあったんで、就職はこっちにしました。」 「実際どう? 都会暮らしは?」 「んー。疲れます。ひたすら。 だから家は……もともと予算の都合上選んだ地域だったんですけど、都会とは言えない地域にして正解でした。 通勤に少し時間はかかりますけど。」
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