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 その三日後。  アキは、採掘場の最深部にいた。  事の起こりは、カトカが操縦する貨物船が採掘された燃料と共に飛び立った後。これで次の貨物船が来るまで一人でほっとできると安心していたアキのもとに飛び込んできたのは、採掘量の異常な上昇を示すアラートだった。 「え? なんで?」  もちろん、採掘機器類の更新は無かったのだから、採掘量がいきなり増えるわけがない。だが、アキの当惑に、人工知能もらしくない当惑を返すのみ。その日の異常な数値はすぐに収まったが、翌日も、そして今日も、数値が不意に跳ね上がる異常は続いている。どうにかする必要が、ある。だからアキは、殊更念入りに、地面を無心に掘り続ける無人の機械を点検していった。  だが。 「ふうっ……」  地上へと向かうエレベーターのひどい揺れに息を吐き、安全用ヘルメットの紐を緩める。機器類には、異常はなかった。数値を記録する方の機器類にも異常が無いことは、昨日確かめてある。異常な数値が表示されるのは一時のこと。地球時間で一時間以内に、数値は元に戻る。記録されるグラフも、普段通りの平坦なまま。と、すると。……一体何が原因なのだろうか? 苛立ちの舌打ちを、そっと飲み込む。燃料採掘の最終責任者である本社に問い合わせるしか、ない。何か嫌なことを言われるだろうか? 重くなった心に、アキは首を横に振った。向こうが何を言ってきたとしても、人員がやってくるのはかなり先。それまでに解決策を見いだしさえすれば、孤独の安らぎは壊れない。 「またですっ!」  何が原因なのか、考えに沈みかけた耳に、切羽詰まった人工機能の機械声が響く。手元の端末を開くと、ディスプレイに映る採掘量を示すグラフは、確かに上昇を示していた。 「状況をモニタリングして!」  とにかく、異常な数値が出ている今の状態を記録することが必要。そう判断して再び端末に目を落とす。その時。微かに聞こえてきた泣き声に、アキははっと顔を上げ、窓を探した。……まさか!
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