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曇り時々晴
会いたい……。ひとこと言えたらどんなに楽だろう。
気づけば始まっていた恋に動揺もしているけど、この恋を発展させる方法も終わらせる方法も分からない。
そもそも…自分は本当にあの人を好きなのだろうか……?ただ流されているだけ?
別に会えなくても、仕事に没頭していれば思い出すこともない。
思い出すのは…連絡が来た時と、仕事も落ち着いて考えることのない休憩時間と、彩羽が病院に行く日くらい。あとは別に…思い出すこともなかった。
それなのになぜだろう。
辻さんがマリアと話をしている姿を見ると、胸がモゾモゾしてしまう。
辻さんに特別な感情を抱いているわけでもないのに、なぜ?
私はマリアを心から応援しているのに…なぜ?
不意に思い出したのは、詩音さんの優しくて大きな手だった。
こんな状況じゃなかったら自分だって詩音さんに甘える時間があったはず……。
寄り添って、他愛のない話をして、ドライブだって旅行だって行けたかもしれない。
――全部全部、新型コロナウイルスのせい。あれさえ蔓延しなければ、今頃もっと……。
ああ…これも私のわがままかな……。
今は仕事があるだけで恵まれている状況だ。
もっと冷静にならなきゃ……。
2020.7
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