1話 妖怪妖狐の襲来

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1話 妖怪妖狐の襲来

 大昔の人が時刻を数える中で、丑三つ時とは午前2時辺りを指していた。草木も眠ると比喩されるほど、暗く静かで不気味な夜の世界であった。そして、その時間帯に妖怪が現れると信じていた。  しかし、現代の世界においては同じ深夜の時間帯でも、特に都会では建物の明かりなどが道を照らし、昼間のように出歩いている人も少なくない。  この現実世界では妖怪が現れるような気配はまるでない。  さて、これから(つづ)らせて頂くこの小説の世界では、人々以上に働いている者たちがいる。それはAIロボットである。  眠気を知らない機械の体は人間の幸福な生活を守るために、日夜問わず活動をしている。  ここは人間とAIが共生(きょうせい)した世界だ。  そして、この物語は、とあるクラシックタウンから始まる。  ここはラハンという街で、ここに住む住民たちは家の中では未来の最新家電に囲まれて過ごしているが、外では暖かな太陽の下、ベンチに座りながら自分たちが住んでいる古き良き街並みを眺めてはそこで感じる穏やかな気持ちを満喫していた。  夜になれば、一定の間隔に設置された街灯が(ひか)えめに道を照らしていて、いつも人通りは少なく落ち着いた街の色合いであるために、閑散とした街でもあった。  だけど、それは会社勤めの人間にとっては質のよい睡眠が取れるのである。  しかし、今夜はそんな街の穏和な雰囲気が台無しになっていた。  ガシャーン、ガシャーンと騒がしい音が街中に響いている。  この騒音の正体は鋼鉄で出来た全長3メートルを越える人型のロボットが原因であった。ロボットの胸の辺りには国軍の紋章が見える。  武器を所持しているロボットをこの世界では『機械兵』と呼ぶ。それは遠隔操作で人間の手によって動かされていた。  それが、こんな夜中に道路だけでなく住民が住む建物の屋根にも無数の機械兵の目が光っていた。  現在、この地域は戒厳(かいげん)令による外出禁止が発令されており、その理由を知らない住民は怯えていた。  今からここで戦争が起こるのではと思ってしまうほど、機械兵の激しい足音があらゆる方面から聞こえてくるのである。
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