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しばらく、カムイが簡単な世間話を話すとリーバは落ち着きを取り戻してくれた。
「すみません。ご迷惑をかけました。私はリーバと申します。ここにあなたが住んでいると、人から聞いて来ました」
カムイはどうして自分に会いに来たのかと尋ねた。
リーバは視線を落としてどのようにして説明すればいいのか、しばらく言葉を選んでいた。
沈黙が続いたがカムイは急かさず穏和にゆっくりと待った。
「…昔からこうなんです。前触れもなく消失感に襲われて、落ち着かなくなって、理由がないのに自分を責めてしまう。そして、求めてしまう…。『なにを?』と聞かれても困ってしまいます。なぜなら、自分でも分からないからです。それは悲しいことです」
リーバは真正面にカムイがいるので目線の方向に困り少しソワソワし始めた。
それに気がついたカムイは椅子をもう1脚持ってきて横並びになるように座った。
リーバはホッとして綺麗な庭を見ながら落ち着いて話せるようになった。
「あなたのことを知ったのはあなたが建てた博物館でした。レトロ家具がテーマで昔の人がどのような生活をしていたのかを見て学ばせて頂きました」
それを聞いて、カムイは嬉しくなって感謝を述べた。しかし、リーバは困った顔をして、何故か続きを話しづらそうにしていた。
「…しかし、私にとって重要なのはそこではありませんでした。…言葉にすると大変失礼ですが、博物館の時が止まったようなあの閉塞的な空間が、有意義でない退屈な時間が私にとって最も心が落ち着くことをその場にいたときに気付かされたのです」
これを聞いたときにカムイは優しい表情を崩してはいなかったが、きっと顔は固まっていたと思う。
確かに館内で人を見かけるのはまれであった。さらに、先日も暇という理由で若者のアルバイト警備員が辞めたばかりであった。
さて、どうしたらこの若者を元気にしてやれるのだろう。
たけど、そもそもカムイが見知ったばかりのリーバを助ける必要があるのだろうか?
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