2話 血なき代理戦争

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 それは国同士の機械兵による戦争が勃発したのであった。当時は国同士が戦争をすることは国際ルールとして固く禁じられていた。  しかし、去年に起きたテロ組織との血なき戦いを正当化の材料にして機械兵同士ならば戦争ではないと両国とも強引に主張してきたのであった。  それも驚くことに騒ぎだしたのは国のトップではなく、その両国の民衆であった。お互いに相手の国を嫌い罵倒して両国関係が悪化していた時期だった。  それでも、他の諸国はその主張に強く批判した。そして、周りの国々が連携して代理戦争を早い段階で終結させることに成功したのだった。  戦争は止められたが両国の民衆による、いがみ合いは続いた。  その血の気の多い感情を利用したのがWRFA(世界ロボットファイター協会)だった。  WRFAとは世界各地にいる試合用ロボットファイターの世界王座認定団体である。  通常、ロボットファイターは一対一のリング上で戦うのだが、WRFAは戦争の代わりにふたつの国別のチームに別れて場所も無人の荒野での競技を提案した。  そして、大勢の遠隔操作されたロボットファイターたちを一斉に戦わせると代理戦争だと言った。  この大企画には下手に国民感情を煽るのではと懸念の声も多くあったが、すでに両国の民衆間での傷害事件が世界各国で多発していて暴力の矛先をせめて機械に変えたいという思惑もあった。  さらに、開催する一番の理由として当事者である両国ともロボットファイターの競技に熱い情熱を持っており、また神聖視していた。  だから、両国ともこのイベントに強い関心があり賛同を得ていた。  ロボットファイターは軍用ではないので銃器などの武器は装備されていない。しかし、イベント当日の戦闘は激しいものになった。  争う両国だけでなく世界中の人々がテレビ中継されている大勢のロボットファイター同士の戦いに釘付けになり熱狂したのである。
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