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「…いいかな?これは私の身近にいる子どもの話だ。その子の親は歴史研究家で人間同士の戦争について熱心に調べていてな。自分の子どもに戦争とは本来恐ろしいものだと言い聞かせていた。だからか、その子はプロレスは好きでも戦争、代理戦争は毛嫌っていた。そんな中、通う学校で問題が起きた。同じクラスメイトのなかに父親が機械兵のエースパイロットということで態度が横柄なガキ大将がいた。そして、その子と些細なことで喧嘩になった。そのとき、私の身近な子はガキ大将に対して『軍人は神様ではない!僕を見下すな!』と怒ったらしい。そのあと、担任の先生が来て喧嘩を止められたが、その先生から人の親の職業を貶してはいけないと叱られたらしい。その子はこの事を泣きながら私に話してくれたよ。理不尽に感じたのだろうね。その子は力あるものが偉いのかと強く疑問を抱いていた。我々は代理戦争を持ち上げすぎたのかもしれない」
カムイはその子どもが泣きながらも目が鋭く大人に対して怒りを訴えている顔を鮮明に覚えていた。
「…その身近な子どもって『凪の海』に入会している子ですか?」
メアリーの質問にカムイは嫌な予感がした。
凪の海とはリーバから助けを求められたときに思いついたことだった。
リーバのことをより詳しく知っていくと、どうやらAIや機械に囲まれた生活に息苦しさを感じているようであった。そこで、それらから遮断された空間がリーバには必要だと思われた。
さらにリーバと同じように現代の生活に馴染めない人々が他にも沢山いると思った。
カムイは新たな生きがいとしてその人たちを支援する慈善団体を作った。それが凪の海である。
凪の海の活動を一言でいえば、自然と戯れることである。
普段、会社でも学校でも機械に頼り、AIと接することが多い。
だから、それらに頼らない生活を送って
、データや数式ではなく自分の五感で物事を捉えてほしいと願っていた。
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