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「前から聞きたかったけど、凪の海はどんな活動をしているのですか?」
「直近のことだとキャンプに行きましたな」
「行って遊ぶだけ?」
「ええ」
「キャンプなら家族でも友人だけでも行けます。凪の海ならではの目的はありますの?」
「いいえ、私から参加者にお題を出すことはしないようにしています。なぁに、凪の海は独り身で寂しいこのジジイの話し相手が欲しくて作ったみたいなものですよ」
このように答えたがメアリーは納得していない様子であった。
隣の俳優がまた論点からズレていると苦言を呈したにも関わらず彼女の責めの問いは続いた。
「これはあまり言いたくなかったけど、その団体に悪い噂があることをご存じかしら?具体的な目的がないのに何故か多くの人々が集まるその団体は夜な夜な時代に逆らうような内容の集会を開いていると」
「全くの事実無根の話だ。さっき、あなたはそのような噂は馬鹿馬鹿しいとおっしゃていたではありませんか」
「子どもまで巻き込んでいるというのは?」
「機械が苦手な者、時代に乗れない者は何も年寄りだけではありません。以外と学生などの若者も多いのですよ」
カムイはハッキリと弁解をし続けたが、些か疲れて背もたれに深く寄りかかった。
最近、メアリーの態度が変わってきたと前に説明した。
彼女は自分の意見には遠慮がなく、それを相手にぶつける我が強い性格である。しばしば、そのような態度に世間から疎まれることもあるが、それはあくまでも討論の内容に対してであった。
今回のようにカムイが作った団体という討論とは関係がない個人的なことについて攻撃をするような女性ではなかった。
今は明らかにカムイ本人に対して悪態を見せている。
「機械兵嫌いのあなたが来る人々にAIや機械の不必要の考えを押し付けているのではないでしょうか?」
「君は私について何か勘違いをしている。私が否定しているのは機械兵を利用した戦争の捉え方であって、私や凪の海に来てくださる人たちは別に現代のAI社会を憎んでいるわけではない。この前も、クリーン君が屋敷掃除を手伝ってもらってとても感謝しているのですよ。ただ、時にこの人類の進化に付いていけなくて休息が欲しいと思うだけです」
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