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クリーン君はゴミが道端に落ちてあったら即座に掃除をして綺麗にする。また、ゴミを持て余している人を見かければ近づいてきてゴミを回収してくれる便利なロボットであった。
さらに、ゴミの限界許容量が近づくと、処理場に移動してゴミを空にする。そのときに外で汚れた自身の機体も洗浄して、常に汚れと臭いがない清潔な状態を保つのである。
それと、言語を用いたコミュニケーションが可能であり、通りかがる人々に愛想よく挨拶をする。
そんな綺麗好きなクリーン君は皆から愛される存在だった。
それで不潔なポリバケツは必要とされなくなり、街並みから消えていった。
ベンチの隣にあるポリバケツはふたが空いていた。中を覗くと、ゴミは入っていないようであった。
しかし、中身を確認しているときにポリバケツがガタガタと揺れたのである。
部下はネズミが隠れていたのかと思ったが、リーバは怪しんでポリバケツをさらに調べるように命じた。
部下は意味がないと思いながらも、上官の命令なので機械兵の大きい手でポリバケツを持とうとした。
その瞬間、ガシャーンと音が鳴った。
機械兵の足音?…いいや、これは部下がポリバケツを持つために機械兵の伸ばした腕が突然切断されて地面に落ちた音だった。
部下は状況を理解する前に、風を切る音と共に鋼鉄の体はバラバラになってしまった。
リーバも状況が飲み込めずに呆然としていた。すると、ポリバケツがさらに揺れ始めた。
揺れていく中で、なんとポリバケツの外面から片腕がはえてきたのである。それから、人間の体のパーツが次々とはえてくる。
リーバは不気味な光景を目にして動けずにいたが、心臓は興奮で激しく騒いていた。
(もしかしたら、本当に妖怪が現れたのでは?)
最後に人の頭があらわになったときに煙がボッと噴き出した。そして、そのなかから人間が現れたのである。
ポリバケツに化けていた者は一呼吸置いてから「こんばんは」とリーバに挨拶をしてきた。
だけど、リーバは驚きで返事ができずにまじまじと相手の姿を見ているだけだった。
その者の姿はまるで東の島国に伝わる歌舞伎役者のようであった。それも、派手な役所であろう鮮やかな若葉色の羽織袴で、背中には大きい蝶々の羽のような仁王襷が結ばれている。そして、顔には狐の面がつけてあった。
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