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さらに驚いたのは、相手が小さく子どもだったことだ。さっきの挨拶で声変わりがしていないことから12歳前後の少年だと思われる。
背中にはその子自身の身長と同じぐらいの大太刀が、鞘なしで刃が剥き出しのものを身につけていた。
(こんな子どもが妖怪なのだろうか?)
リーバにはこの華奢な子どもが鋼鉄の塊を切り裂いたことが信じられなかった。
一方、狐面の子は一向に挨拶が返ってこない相手を不思議そうに見ていた。
次第に待ち続けるのが退屈になってきたので、地球に降り立つ理由となったもの、ある探し物について尋ねてみた。
「ねぇ、『要石』はどこにあるの?」
「え?」
「あのね。要石が盗まれて『蟲様』が怒り狂っているんだから、早く戻さないと大変なことになるよ?」
「何の話をしている?」
狐面の子は別に期待していなかったが、かすりもしない返答に少し苛立ちを覚えた。
(そうだ、役立たずは早くスクラップにしてやろう)
そう思って狐面の子は大太刀を手にした。
リーバは慌てた。任務の失敗よりも、妖怪との出会いが終わってしまうことに心が嘆いたのである。
「ま、待ってくれ。君に聞きたいことがあるんだ」
「ごめんね。僕の方は何もないよ」
「君は妖怪なのかい!?」
リーバの興奮気味な質問に狐面の子は少し圧倒された。
「…妖怪の妖狐だよ。でも、人間の血が流れている」
「妖狐!一体どこからやって来た?」
少し間を置いてから、狐面の子は指を指した。リーバがその指した方を向くと、そこには巨大な月があった。
「まさか、月から来たのか!」
そう言って、リーバが顔を戻すと狐面の子はいなかった。
しまったと思い、辺りを見回すと狐面の子は時計塔の壁を走って屋上まで登っていった。
慌てたリーバは後を追うために背中のジェット噴射で時計塔の屋上へ一気に飛んだ。
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