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2話 血なき代理戦争
ふとしたことから、カムイは初めてリーバと出会ったときのことを思い出していた。
あれはカムイが退役をして、軍を去ってから、一年が経とうとしていた。カムイは広い敷地の中で趣味の家庭菜園をして、悠々自適な生活を送っていた。
カムイの妻は既に病で他界していた。使用人は長年仕えてくれた老執事がひとりいたが、友人でもある彼にも余生を満喫させたくて、自分が軍を辞めた折りに解任させた。
なので、菜園を含む屋敷全体の手入れや掃除は自分一人でやらなければいけなかった。
とはいっても、移動式ごみ収集ロボットのクリーン君が来てくれたり、たまに老執事や軍の元部下などが遊びに来てくれて、色々手伝ってくれることもあった。
その日は誰も来る予定は無かった。腰が痛くなってきたので菜園の手入れを中断して、庭用の椅子で休憩を取ることにした。
元々、几帳面な性格だったため、庭木や花木の剪定は小まめにおこなっていた。
綺麗に整えた、シンメトリーで愛着のある自分の庭をベンチに座りながら眺めるのは心が満たされる。
暖かな日差しが庭を包み込む昼頃、カムイはうつらうつらと静かなひとときを過ごそうとしていた。
そんな中、どこからか泣き声が聞こえてきた。
目を開けて声の主を探すと、泣きながらカムイの敷地に入ってくる若者がいた。
その若者こそが新兵になったばかりのリーバであった。
初めて会ったリーバの印象は小さくて情けない若者に見えた。
しかし、泣く者を追い返すことができなくて、とりあえず自分が座っていた椅子を相手に勧めた。
カムイは相手と目線が合うように腰を落として優しく声をかけた。
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