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【小さなぴよこの恩返し】
暗く、静けさが漂う闇の時間。
眠ることなく
空をみあげる瞳が、ふたつ。
「にい、あめかな。」
「あめだな。」
「ほし、みえるかな。」
「ほし、みえないな。」
夜空は、どんより暗く
ぽつぽつ降り出した雨に、
周りの木々も、土も濡れ始め、
うっすら、泥臭い匂いに変わってくる。
けれど とある場所に
まあるいほんわかな暖かい光が 2頭と1羽の姿を照らしていた。
「これまで育てていただいてありがとうございます。」
コンクリートの壁の内側に2頭のゴリラの横に
小さな白いぴよこが1羽。
「いくのかい?」
少し難いの良いごりらの問いかけに
小さなぴよこが ゆっくりうなづく。
その姿を確認した ひとまわり
小さいほうのごりらが
また 雨粒が落ちてくる方へ 視線を移動した。
この子が空から落ちてきた日は
キラキラの流れ星がたくさん見える明け方の空。
星のかけらが落ちてくるそんな雰囲気のなか
その流れ星たちの間を抜け出して
小さな薄紫の光を放つたまごが
にい と 自分の方へ
空のてっぺんから
ふわふわ降りてきた日を昨日のことのように思い出していた。
あれからいくつもの夜を越えて
ここまで育ってきたこのぴよこが
とうとう巣立っていく日がやってきた。
❃
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