【雨が降る】

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【雨が降る】

日頃、 自分たちが暮らす檻の前。 丸い看板に 「あちら←」「こちら→」 という文字が刻まれている 古ぼけた小さなバスの停留所が あった。 園内を走るローリーバス。 いつもわいわいがやがや、 ヒトが乗り、 ヒトが去る、 乗り物で移動するヒトの風景を 毎日 何気なく見ていた。 兄は咄嗟に気がついた。 「バスが来るから、 ヒトが来るかも。」 なぜならば、 丸い看板の下の 四角の小さな板に、 なにやら、 文字が書いてあったからだ。 「にぃ・・」 白いワイシャツに グレーのパンツ。 黒のベルトには、 シルバーの留め具。 不安げな弟の姿は、 どこから見ても、男子中学生。 ちょっと短髪で、 雨にぬれた くせっ毛が、 ぴょんぴょん自己主張する。 ❃
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