5人が本棚に入れています
本棚に追加
【雨が降る】
日頃、
自分たちが暮らす檻の前。
丸い看板に
「あちら←」「こちら→」
という文字が刻まれている
古ぼけた小さなバスの停留所が
あった。
園内を走るローリーバス。
いつもわいわいがやがや、
ヒトが乗り、
ヒトが去る、
乗り物で移動するヒトの風景を
毎日
何気なく見ていた。
兄は咄嗟に気がついた。
「バスが来るから、
ヒトが来るかも。」
なぜならば、
丸い看板の下の
四角の小さな板に、
なにやら、
文字が書いてあったからだ。
「にぃ・・」
白いワイシャツに
グレーのパンツ。
黒のベルトには、
シルバーの留め具。
不安げな弟の姿は、
どこから見ても、男子中学生。
ちょっと短髪で、
雨にぬれた くせっ毛が、
ぴょんぴょん自己主張する。
❃
最初のコメントを投稿しよう!