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今北の事情
今北 清二は漫画家志望の大学生。
彼が歩く駅前通りを
ギラギラと照り付ける夏の太陽に
負けないほど目が輝いている。
何故なら彼は夢の漫画家デビュー
が出来るかもしれないけど
ほぼ確実に出来るのだ。
意味が分からないだろう。
細かく説明すると、
彼はある漫画賞に応募している。
結果発表は今日の昼12時だが、
昨日の夜に知り合いの編集者から
審査員からは超好印象。ほぼ受賞確実。
と教えられて、
最高に舞い上がっている。
と言っても100%はこの世に無い。
現在は11:20
後30分で確実になるのだ。
○
さて、
夢を叶える場所は自宅がベストだが、
今から家に帰っても間に合わないだろう。
どこか涼しいカフェにでも入って
優雅に受賞を確認しよう。
行き先を決めると余計に興奮が
止まらなくなる。
あァ、暑いなぁ。
今年の夏は特に暑い。
日差しはともかく、コンクリートからの
突き上げるような熱気が
靴を熱してその中の足を蒸らす。
カフェ、カフェ、
無いな。
全然無い。
大学の最寄り駅近くのここには
カフェなんてオサレな物は無かった。
変な時間に授業があるから!
怒りで汗が余計に吹き出る。
いや、待て待て。
後少しで念願のデビューなんだ。
適当なファミレスでも探せば良い。
己を落ち着かせるために
額の汗をハンカチで拭く。
お、ちょうど良いファミレスがあった。
『ファミリーズ』
知らない名前だ。
まあ、良い。
夢の漫画家様になれるんだから!
蝉の声を背に、
今北はファミレスのドアを開ける。
時刻はちょうど
11:30
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