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あと5分
11:55
漫画家志望の今北は、
あと5分で漫画家デビューできる。
ワクワクが濃すぎてすぐに喉が乾くため
今飲んでいるアイスコーヒーは
15杯目だ。
あと5分!あと5分で栄光を掴める!!
今北は16杯目のおかわりを求めて
席を立つ。
家族を種に脅される殺し屋の栗山は、
今もタイムリミットに内心焦りながら
家族を拐った組織の男と話していた。
「お前もヤバいんなら、組織に嘘でもつけば良いだろ。そのあとゆっくり話そう」
「そう言って逃げるつもりだろ?分かってンだよ」
男は、
テーブルの下から銃を栗山に向けて
余裕の無い目をぎらつかせる。
あと5分、
それだけの時間でこいつを説得できるとは思わない。
所蔵会社に連絡を取って、家族の保護を頼もう。
こういった時のために家族のスマホに特殊GPSを仕込んである。
連絡が取れれば、どうにかなる。
いや、どうにかする!
「トイレ行ってきて良いか?」
「逃げるなよ?」
「こちとら家族の命掛かってんだ。バカな真似はしない」
「フン!」
男は貧乏ゆすりをしながらそっぽを向く。
ターゲットから目を離すとは
つくづく馬鹿だな。
栗山は報復の計画を練りながら
トイレへ向かう。
桐山は世界を救う組織のエージェント。
あと5分で滅びる世界を
救う装置を待っている。
その装置Xを起動できるのは
桐山だけ。
桐山は今、とても焦っていた。
遅い!遅い!遅過ぎる!
科学者は一体何をしているんだ!
世界の命運が掛かっているんだぞ!
といいつつ、
桐山自身は運が良いだけの素人。
運だけでここまで来た男。
そんな男に日夜科学を探究する
科学者は非難されている。
聞けば科学者も怒りに震えただろう。
しかし、科学者は怒りに震えることは無い。
永遠に聞くことが無いからだ。
いや、永遠に聞けないからだ。
男性トイレの一番奥にある個室のドアを
開けた桐山が、
血まみれで息絶えた科学者を見付けるのは
ちょうど10秒後。
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