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車道の奥に湧き出したつむじ風が、ほの青い色を纏い埃を巻き上げながら2人のすぐ横を通り過ぎて行く。直哉の足首にも、細かい小石が当たり痛いほどだった。
「狩野川光って……数学の先生だろ。死亡ってどういうこと?」
直哉は唸るように呟いた。
「もしかして、アプリのメッセージって予告なのか……」
宏典も驚いた表情で言う。
「あと5分で狩野川先生が死ぬかも知れない! 急ごう。平安通交差点はすぐそこだ!」
直哉は叫ぶと同時に駆け出した。そんな直哉のすぐ横を、シルバーメタリックのプリウスが走り去っていく。
こめかみに痛みを感じる。空を埋めつくす乱層雲が信じられない速さで流れている。
その雲が向かう大通りの東側の十字路。平安通交差点だ。赤ちゃんを抱いた女性が横断している。右折しようとしたプリウスが、歩行者に気付くのが遅れ急ブレーキを踏んだ。タイヤが擦れる音が悲鳴のように響く。プリウスは女性のすぐ脇を辛うじて行き過ぎるが、すでにコントロールを失った車体は制御されることなく歩道に乗り上げる。
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