11506人が本棚に入れています
本棚に追加
道路の片隅でできたつむじ風が、ごみを巻き上げながら鋼材の落下現場を過ぎて行く。埃が一気に吹き払われた。
それを見て、直哉はぎょっとする。落下した鋼材が、歩道のアスファルトを垂直に貫いていたのだ。
…… 狩野川先生は? ……
先生は歩道から身を乗り出すようにして先生を見る。
先生は、アスファルトに突き刺さった十数本の鋼材の手前で辛うじて踏みとどまっていた。
信号が青に変わると、直哉と宏典は全速力で先生のもとに駆け付ける。
「大丈夫ですか?」
直哉が声をかけるが、先生は、茫然と立ち尽くすばかりで、何が起きたのか全く理解できていないようだ。
先生はしだいに正気を取り戻すと、眼前に林立する鉄パイプを震える目で見詰めながら訊いた。
「どうした? 何が起きた?……」
直哉は、「危ないところでした」まだ何か降ってくるかも知れません。ここから離れましょう」と言い、先生の腕に手を添えた。
.
最初のコメントを投稿しよう!