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初夏の空は晴れ渡り、遠くに見える入道雲が眩しいくらいに光って見えるけれど、奏介の心は暗かった。
…… どうしてあんなに酷いことをするのだろう ……
そう思いながらも、何もできない自分の無力さを嘆き自己嫌悪に陥った。
◇◇◇
「明日から塾に通うのよ。なのでプレゼント。これで帰りの時刻を知らせなさい。迎えに行くから」
そう言って、母がキッズスマホを寄越した。小さめで、余分な機能の付いていないものだ。
奏介は一言、「ありがとう」と言って受け取った。
母は優しそうな顔をするけれど、本当は優しくないことを奏介は知っている。母は、自分の息子を公立の中学には通わせたくないと考えている。その理由は母自身の世間体のため。母はいわゆる毒親だ。
奏介は、これを機に母が自分に対してもっとうるさく言ってくるのではないかと不安に思った。
「ほら。家に帰ったらまず宿題を片付けなさい。そうじゃないと、塾から帰ってきて宿題をやらないといけなくなるでしょ? そうすると寝る時間も短くなるから頭も悪くなっちゃうわよ。分かった? 奏介。明日から塾なんだからそうしてちょうだい」
…… やっぱり。さっそく注文がきた ……
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