第5話

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 教室に一人残っていた奏介は、ズボンのポケットからスマホを取り出した。画面に『I-アラート!』の文字が浮かび上がる。  タッチすると5分後アプリが立ち上がり、中央にオレンジ色のPushボタンが現れた。  …… 何、これ ……  奏介は不審に思ったけれど、いじめのアラートだと書いてあったことを思い出すと、Pushボタンを押した。  『5分後……I-アラート! 棚橋富美子が、本庄北小学校の校舎裏で池沼銀司と深沢大雅にパンツを脱がされます』  …… え?! これって一大事だ。でも5分後なんだよね? ……  奏介は一生懸命考えた。  …… 先生に知らせる? でも本当に動いてくれるのだろうか ……  …… 証拠写真を撮っておく? でもどうやってみんなに知らせる? っていうか、もうみんな承知の上の出来事だよね。いじめは止められないし ……  …… じゃあ、本人に知らせる? でもどうやって ……  結局奏介は、『校舎裏で子供同士が争っている』という電話を、学校に入れることにした。  ネットで学校の電話番号を検索し、すぐに電話をかける。  『はい。本庄北(ほんじょうきた)小学校の五十嵐(いがらし)です』  偶然担任の先生が出た。奏介は、声色を変えて話す。  『近所のものですが、校舎の裏で子供同士がけんかをしてるみたいですよ』  『本当ですか。ご連絡ありがとうございます』  電話はすぐに切れた。先生が校舎裏に向かっただろうか。奏介も、気がかりなので東側のフェンス沿いに校舎裏に向かった。 .
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