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逆に直哉は仰天した。憧れの唯美が5分後に告白するというのだ。
「もう出ようぜ。塾に間に合わなくなるぞ」と宏典が急き立てるように言った。確かに駅前にある学習塾の始業まであと10分だ。直哉と宏典は漫画喫茶を出ると塾へ向かう。日はもうとっぷりと暮れているが、駅前は店舗の明かりと通行する車のヘッドライトに照らされ、眩いばかりに輝いていた。
「直哉くん」
塾に入ろうとしたとき、ふいに後ろから呼び止められた。振り向き声の主を見てびっくりした。唯美だった。
直哉と同時に振り向いた宏典も、目をぱちくりさせている。
「どうしたの? 唯美さん」
「お願いがあるんだけど、こっちに来てくれる?」
「でも、もうすぐ塾が始まっちゃうし」
「大丈夫。すぐに終わるから」
「分かった」
来た……。心臓の鼓動が激しくなる。胃が喉から飛び出しそうだ。
直哉は、「ちょっと行ってくる」と宏典に言うと、唯美の後について塾の裏手の空き地に入った。
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