第1話

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 道から一歩内に入ると、たちまち喧騒(うるささ)は消え去り、ビルの間を抜ける冷たい風が吹きつけた。わずかに土の匂いが風に混じっている。  直哉は震える声で「話って、何?」と訊いた。  すると唯美が直哉の前に一歩進み出た。ビルの裏側から()れ出る淡い光が唯美の顔を照らしている。唯美の表情は真剣だ。  「私、直哉くんのことが好き……」  直哉はどきりとした。唯美の瞳が(うる)んでいる。直哉が何も答えられずに黙っていると唯美が言葉を続けた。  「直哉くん、私と付き合ってください!」  きっぱりと言うと唯美は頭を下げた。ポニーテールが揺れて肩に流れかかる。制服のブレザーの襟元から白い肌がのぞいて見えた。  「けど、どうして僕なんかと? 唯美さんめちゃくちゃ可愛いし、性格真直(まっす)ぐだし、勉強もスポーツも抜群(ばつぐん)にできるし……ぼくも唯美さんのこと大好きだけど、釣り合わなくないですか?……」  「そんなこと言わないで。私、直哉くんのそういう控えめで優しいところが大好きなんだから! …… だめなの?」  そう言って見上げる唯美の顔は、なんと愛くるしいことか。  「全然だめじゃないです。こんな僕でもよければ、よろしくお願いします!」 .  
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