第1話

7/36

9738人が本棚に入れています
本棚に追加
/285ページ
 5分後アプリのおかげで突然の告白にも心構えができ、あがり症の直哉でも対応することができた。おまけに、デートの約束まで取りつけた。  それ以後直哉は、1日に何度もPushボタンを押すようになった。  『5分後……プリペイドカードを落とします』  『5分後……学食のパン、売り切れます』  『5分後……何も起こりません。平安はあなたを幸せにするでしょう』  ……何も起こりませんっかあ。たまには、こういうメッセージもいいなあ……  直哉は5分後アプリのおかげで、安心して毎日を暮らすことができた。  晴れて恋人同士となった唯美が、実は都市伝説が大好きだったのには驚いた。共通の趣味が分かると、互いの心も接近する。デートで動物園やプラネタリウムに行っても一緒にいるだけでワクワクした。2人で食べるランチやスイーツは、どれも美味しかった。  毎日、学校に行くのが楽しくてたまらない。学校帰りにはいつも駅まで美唯と自転車を押して歩いた。木々の葉が色を増すにつれて、秋がしだいに深まっていく。それと同じように直哉と唯美の仲も深まっていった。直哉は、今が人生で一番幸せなときだと思った。 .    
/285ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9738人が本棚に入れています
本棚に追加