第1話

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 ハンバーガーを食べ終わった宏典が、手のひらに残ったパンの粕をはたいてからペーパータオルで口元を拭う。そして「なあ、それって何度も押せるの?」と訊いた。  直哉が「押せるよ」と答えると、宏典が「また押してみてくれない?」と言い出した。さっきのメッセージがずいぶん気になったのだろう。直哉だって気になって仕方がない。直哉は「そうだな。見てみようか」と言い、再び赤いPushボタンを押した。  『5分後……警告! 平安通交差点。幼児を抱いた北川保奈美が交差点を横断』  「北川(きたがわ)保奈美(ほなみ)って誰だ? 知らないなあ。宏典は知ってる?」  「俺も知らないよ」  「今度は平安通交差点かあ。病院東のプリウスと関係あるのかな」  直哉は、2つの情報が自分とどんな関係があるのか考えるけれど、何も思いつかなかった。  「っていうかこのアプリ、直哉に何かを伝えようとしてるんじゃないの?」  宏典が言った。  「確かに、宏典の言う通りかも知れない。のことを言ってるとは限らないからな。スクリーンショットを撮っておくよ」  直哉はパシャリと画面を写し取る。  「平安通交差点なら遠くないから行ってみないか?」と宏典が提案する。  直哉は「それはいい!」と言うと、店の支払いを済ませ、宏典とともに通りに出た。 .
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