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ハンバーガーを食べ終わった宏典が、手のひらに残ったパンの粕をはたいてからペーパータオルで口元を拭う。そして「なあ、それって何度も押せるの?」と訊いた。
直哉が「押せるよ」と答えると、宏典が「また押してみてくれない?」と言い出した。さっきのメッセージがずいぶん気になったのだろう。直哉だって気になって仕方がない。直哉は「そうだな。見てみようか」と言い、再び赤いPushボタンを押した。
『5分後……警告! 平安通交差点。幼児を抱いた北川保奈美が交差点を横断』
「北川保奈美って誰だ? 知らないなあ。宏典は知ってる?」
「俺も知らないよ」
「今度は平安通交差点かあ。病院東のプリウスと関係あるのかな」
直哉は、2つの情報が自分とどんな関係があるのか考えるけれど、何も思いつかなかった。
「っていうかこのアプリ、直哉に何かを伝えようとしてるんじゃないの?」
宏典が言った。
「確かに、宏典の言う通りかも知れない。僕の5分後のことを言ってるとは限らないからな。スクリーンショットを撮っておくよ」
直哉はパシャリと画面を写し取る。
「平安通交差点なら遠くないから行ってみないか?」と宏典が提案する。
直哉は「それはいい!」と言うと、店の支払いを済ませ、宏典とともに通りに出た。
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