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行動力(side 立花)
わ、テカテカ。
深夜零時を過ぎた頃、閑散としたパーキングエリアのトイレの鏡を覗き込んで、思わず呟いた。
鼻の頭と頬が特に酷い。
今日はソフトウェアのリリースで朝からバタバタしていて、一度も化粧直しをしていない。
だから、ある意味必然なんだけど。
でも、こんな顔を今まで晒していたのかと思うと、ため息が出る。
ま、今日に始まったことじゃないけどさ。
気を取り直し、顔全体にティッシュをそっと当て、脂を押さえる。
取り切れない分は更にあぶらとり紙でオフして、プレストパウダーを軽く叩いて、チークをふんわり乗せて。
半分以上取れてしまっている口紅も、本当はキチンと直したいけど、リムーバーがないので、仕方がない。
厚めにリップクリームを塗って、一旦拭き取った後、もう一度、口紅を塗り直す。
思いがけず赤が綺麗に発色して、残業続きの疲れ顔を何とか誤魔化してくれた。
最後に唇の真ん中に軽くグロスを乗せて、当座の完成。
うん、大丈夫。完璧じゃないけど、ちゃんと可愛い。
そんな暗示を自分に掛け、トイレを出る。
出口すぐ近くの自販機コーナーには、職場の先輩で私の目下の想い人、須藤さんが待ってくれていた。
近寄ると、ペットボトルのアイスカフェラテをポイッと渡してくれる。
「悪いけど、着くまで起きててもらうぜ」
「当然です。あ、お金」
「良いよ、それくらい。それより、早く行こう。
のんびりしてると、朝までに着かない」
急かされて、さっき職場の近所で借りたばっかりの白いSUV車に乗り込んだ。
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