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サバイバー(side 須藤)
星を語る、立花が可愛いかった。
まあ、一番はそれだ。
ここ暫く大変だったプロジェクトのソフトリリースを終え、立花も開放的な気分になっていたのかも知れない。
遅い晩飯に寄った、ファミレスのボックス席に座って開口一番、「今日、ペルセウス座流星群が極大を迎えるらしいですよ」って、なんの脈絡もなく、語り始めた。
「砂丘の星は本物です。
見たら圧倒されますよ、多分。
ここで見てるような、霞んでるのとは全然違いますから。
星が近過ぎて降ってくるんです」
立花の実家は鳥取砂丘のすぐ近くにあるらしく、高校時代は友達とよく、夜中の砂丘で星を見ていたそうだ。
星が降ってくるなんて、全くピンと来ないが、立花が星みたいに瞳をキラキラ輝かせながら力説するんだから、否定する理由なんて、何もない。
ちなみに、俺の実家はミナミの繁華街にある。
大学は東京だった。
だからかな。
子供の頃から今に至るまで、星なんてまともに見た事がない。
辛うじて記憶にあるのは、高校生の頃、当時の彼女と行ったプラネタリウムくらい。
それすらも、隣に座る彼女の胸元が気になって、殆ど覚えていない。
そんな訳で、立花が言う、本物の星を見てみたいと思った。
ま、好きな女の願いを叶えたいって気持ちも勿論あったけど。
「今から見に行こうぜ。そこで車借りて」
窓の外のレンタカー屋を指差すと、立花が目を丸くした。
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