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鳩が豆鉄砲を食らった顔とでも言うのか。
驚きが一周回って困惑の表情を浮かべる立花を急かし、慌ただしく晩飯を食う。
その後、直ぐにレンタカー屋に駆け込んだ。
そして今に至る。
順調に行けば、後一時間くらいで、鳥取砂丘に着くだろう。
「砂丘か……。
凄い久しぶり。この前、帰省した時には行けなかったからな」
立花が隣でブツブツ呟いていたかと思うと、「あっ!」と、声を上げた。
「何だよ」
「須藤さん、靴!」
「へっ?」
「須藤さんも会社用の革靴ですよね?」
「当たり前だろ。さっきまで会社に居たんだから」
「砂丘をそのまま歩いたら、すっごい砂が入りますよ。
やだ、しかも私、ストッキングだ。どうしよう」
オロオロと本気で困っている立花に思わず、笑ってしまう。
「どうでもいいじゃん」
笑いながら言ったのが気に食わなかったのか。
何か、心のアレな所に触れたのか。
「良くないですよ! 今履いてる靴、ニ万円もしたのに!!
めっちゃお気に入りなんです。
砂まみれとか、絶対に勘弁ですから!」
クワッ!と叫びそうな勢いでまくし立てる。
その顔が面白くて、笑い転げていたら、立花がぶんむくれた。
「もうっ! 笑い過ぎです!!」
「近くのコンビニでビーサンかスリッパ買おうぜ。
売ってなかったら、新聞紙で作ってやるよ」
宥めるつもりで言ったのに。
立花から返ってきたのが、この一言。
「えっ? おかんアート!?」
「違うわ! サバイバルスキルや!」
立花のボケの所為で、普段、会社ではあまり使わない関西弁が口からついて出た。
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