父の苦悩

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 私の息子は本当に純粋な子なんです。  それは私の教育方針でもありました。 『いつまでも純粋な心を持って、人を疑うよりも信じる子になって欲しい』  晩婚で、妻からおめでたの報告を受けたとき、私はもう中年と呼ばれる年に差し掛かっていました。  私は二十の頃からずっと小学校の教員をしていましたので、色んな子どもたちと触れ合ってきました。中には私を悩ませる、行動や発言に問題のある子もいました。私はそのような子どもたちに共通する特徴は何かと常々考えておりました。そして、彼らに欠けているのは「素直な心」「信じる心」だという結論に至ったのです。  遅くに出来た子はかわいいと言います。学校の児童たちにも多分の愛を注いできたと自負しております。しかし、自分の子にかける思いはそれ以上、いえ、もっともっと何倍もであったことは間違いありません。  それゆえ私は、自分の子には先ほどの教育方針をもって育てて行こうと強く決意したのです。  息子は私の思った通り、とても純粋で、信じる心を持った子に育ってくれました。
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