父の苦悩

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 今からお話しするのは、息子が五歳のときのことです。  息子がある日、テレビを見ていました。おにいさんとウサギの着ぐるみのキャラクターが出てくる、よくある子ども番組でした。  息子はテレビを見ながら鼻をほじっていました。そしてほじった指を口へ持っていき、もぐもぐとしていたのです。  そのすぐ後、テレビの中のウサギが鼻をほじる仕草をしました。  それを見た息子はビックリ。  幼稚園で「鼻をほじって食べてはいけません」と、先生が鼻をほじるジェスチャーをしながらいつも注意していたものですから、息子はテレビの中のウサギに注意されたと思ったのだそうです。  ウサギは鼻をほじる仕草をした後、今度は自分の服のボタンを指差しました。  息子は自分の服を見ました。そうしたらボタンを掛け違えていたものですから、ウサギがそれを教えてくれたのだと思ったのだそうです。 「テレビの中の人から自分が見えているのではないか」と、息子は興奮気味に私に話してくれました。  そのとき私は、そんな息子をかわいらしいと思い、また、誇らしく思ったのを記憶しています。なんて子どもらしい、純粋な発想をするのだろう。私が望んだように育ってくれていると思いました。
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